(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

統合失調症の「悪口が聞こえてくる(幻聴)」を理解する(統合失調症理解#1)(2/5)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.8


 早速はじめますよ。


 たびたび文章を引用させてもらっている、岡田尊司精神科医の著書『統合失調症』(PHP新書、2010年)から、統合失調症と診断されたつぎの男性患者さんに登場してもらいますね。この男性患者さんがほんとうは、(精神)医学の見立てに反し、「理解可能」であることを確かめていきますよ。

 家族から、よく電話で浪費を諫められている男性患者は、電話でガミガミ叱責された後で、幻聴がすると訴えた。幻聴は、「小遣いばかり使って」「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と自分を非難する内容だった(同書p.95)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

統合失調症 その新たなる真実 (PHP新書)

 


 みなさんはこの男性患者さんのことをどのように思い描きました? 俺はこんなにふうに思い描きましたよ。


 男性患者さんは電話で家族に浪費を諫められたあと、ひょっとすると他のひとたちにも、「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」といったふうに内心悪く思われているのではないかと気にし出したのかもしれませんね。


 だけど男性患者さんには、ひとに内心悪く思われているのではないかと気にしているという自覚はなかった。いや、むしろ、すこし語弊があるかもしれませんけど、こう言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。男性患者さんには、ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはない、といった自信があった、って。


 家族からの電話をきっかけに、男性患者さんは、ひとに内心悪く思われているのではないかと気にするようになった(現実)。ところが、そのいっぽうで男性患者さんには自信があった。ひとに内心悪く思われているのではないかと自分が気にしているはずはないといった自信が。で、男性患者さんはその自信に合うよう現実をこう解した


 ひとの声が「小遣いばかり使って」とか「お菓子ばかり食べて、あんなに太っている」と悪口を言ってきて、僕を困らせる、って。


 以上が、俺の思い描いたこの男性患者さん像ですよ。


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