(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

「発達障害」を例に、誰が医学に差別されるのか確認する(3/4)

*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.5


 さあ、さらに突っ込んで、先の引用のつづきを見ていきましょう。さっきの①から③(ウイング精神科医が提唱したと言う3つの特性のこと)がより詳しく解説されていきますよ。そこに注目してみてくださいね。

 ウイングの3つの特性についてはそれぞれがよりくわしい項目に分かれています。続く項目で、自閉症の診断基準となっている『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神疾患の分類と診断の手引)』にそって、それぞれを説明していきます。


 現在の代表的な自閉障害自閉症)の診断方法は「①②③から合計6つ以上、そのうち②と③から1つずつの項目を含むこと」となっています。それに加えて、「①②③のうちの1つが3歳以前に始まること」とされています。


 アスペルガー症候群の診断基準は「①から2つ以上、そして③から1つ以上の基準を満たすこと」「著(いちじる)しい言葉の遅れや知的障害を伴わないもの」とされています。


 この診断基準による広汎性発達障害に該当する人は1万人あたり数十人、そのうちの半数がアスペルガー症候群高機能自閉症だとされています。


 それでは、3つの特性についてくわしく説明していきます。


診断基準となっている3つの特性

①社会性の障害

  • アイコンタクト表情身振りなど言葉以外を使ったコミュニケーションがうまくできない
  • 発達に応じた仲間関係をつくれない
  • 楽しみや興味あるものを人と分かちあえない
  • 人の気持ちが理解できない


②コミュニケーションの障害

  • 話し言葉の発達の遅れ
  • 人とスムーズに会話を続けられない
  • オウム返しやその子独特な言葉づかいをする
  • その年齢に応じたごっこ遊びやものまね遊びができない


③想像力の障害

  • 特定のものに異常なほど興味や関心がかたよっている
  • 決まった習慣や儀式にかたくなにこだわる
  • 同じ動作を何度もくり返す
  • ものの一部に熱中する

精神科医ローナ・ウイング

娘が自閉症だったことから自閉症スペクトラム障害の研究に携わる。1962年に全英自閉症協会(The National Autistic Society,NAS)の創設に関わり、広汎性発達障害の子どもと家族を支援している。

●Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders

精神疾患の国際的な診断基準とされている手引き書。日本語版は『精神疾患の分類と診断の手引 第4版用修正版』(高橋三郎、大野裕、染矢俊幸訳/医学書院/2006)。


※以下引用者より。

記事タイトル、出典先、著者名、引用先siteなど、どれも前掲とおなじ。ゴシック化も引用者によります。


 ①から③に挙げられていた12項目を全部、みなさん、見てくれました? 「アイコンタクト等を使ったコミュニケーションがうまくできない」(①のひとつ目)とか、「楽しみや興味あるものをひとと分かちあえない」(①の3つ目)とか、「ひととスムーズに会話を続けられない」(②のふたつ目)、「特定のものに興味や関心がかたよっている」(③のひとつ目)といったふうに、社会性や、コミュニケーション能力や、想像力が「標準より劣っていると医学に思われるひとたちが、「発達異常と判定されるということでしたね?


 でも、先ほども言いましたように、異常なひとはこの世にただのひとりも存在し得ません。言うなれば、ひとはみな正常です。


 引用文に挙げられていた12点はどれもこれもみな、ほんとうは正常です。いまさっき列挙した「アイコンタクト等を使ったコミュニケーションがうまくできない」などといったこともそうだし、さらには「話せるようになるのが遅い」こと(②のひとつ目)も、「年齢に応じたごっこ遊びやものまね遊びができない」こと(②の4つ目)も、「同じ動作を何度もくり返す」こと(③の3つ目)もみな、ほんとうは正常です。


 そのようにあることが仮に標準的なひとより劣っているということを意味するのだとしても正常であることに変わりはありません(キレイ事を言っているのではありませんよ。ただ事実を言っているにすぎませんよ)。


 いや、たとえば「アイコンタクト、表情、身振りなど、言葉以外を使ったコミュニケーションがうまくできない」(①のひとつ目)といったように、コミュニケーション能力が「標準より劣っている」と医学に思われるひとたちはたしかに、コミュニケーションについて何らかの特別な練習をしたほうがいいのかもしれませんね(しないでもいいのかもしれませんけど)。「話し言葉の発達が遅い」(②のひとつ目)といったように、発話の発達が「標準より劣っている」と医学に思われるひとたちも、そうですね。発話について何らかの特別練習を受けたほうがいいのかもしれませんね(受けないでもいいのかもしれませんけど)。泳ぎや字のうまくないひとが、水泳や習字の特別練習を受けたほうがいいのかもしれないのとおなじで、ね? だけど、仮にそうした特別練習を受けたほうがいいのだとしてももしくは何らかの支援を必要とするのだとしても、コミュニケーション能力や発話の発達が「標準より劣っている」ことは、やっぱり異常ではありませんね。


 あくまでも正常ですよね?


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