(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

医学に差別されるのは誰か(3/3)

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.3


 異常なひとなどこの世にただのひとりも存在し得ないにもかかわらず、つまり、言うなれば、ひとはみな正常であるにもかかわらず、医学に不当にも異常と決めつけられて差別されてきたのはそしてされていくのは、「標準より劣っている」(悪い意味でふつうじゃない)と医学に思われるひとたち、であると、今回の考察で明らかになりましたね。


「標準より劣っている」と医学に思われるひとたちが、医学に、不当にも異常と決めつけられて差別されるというこのことは、特に精神医学を見るとよくわかるように、俺は思います。


 もし暇があれば、精神医学の本をひもといてみてくださいよ。


 そこには、患者さんの「苦しみ」が、症例と名づけられ、ひとつひとつ挙げられているはずだとみなさん、漠然と思い込んできたのでありませんか。「苦しまないで居てられるようになる」ための方策と模索がそこに記載されているものだって? だけど、実際にみなさんが、精神医学の本を開けてそこに目の当たりにすることになるのは、患者がいかに「標準より劣っている」かを、精神医学が呆れたように首を横に振りながら(すなわち、不当にも異常と決めつけながら)、口を極めて言い募っているさまではないでしょうか。





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*今回の確認をもっと簡単にやる回はこちら。


*今回の最初の記事(1/3)はこちら。


*余談1:医学は勝手な基準を設けて、ひとを3グループに分けると、まえのほうで言いましたね。その基準は絶対的なものではないとのことでしたけど、それは、ひとを正常と異常に分けるときの基準が絶対的なものではないということを意味しますね? 実際、高血圧やメタボの診断基準はよく変更され、そのつど、基準の正当性が論争になるではありませんか(ちなみに、Aさんに好ましい血圧は、Bさんにも好ましいと頭から決めてかかって良いとみなさん思います? 「ベスト体重」がひとそれぞれ違うように、「ベスト血圧」も各人異なるかもしれないと思いません?)。


*余談2:「正常と異常の境目がはっきりしない」というこのことから考え進めていって、ついに、正常とは何か、異常とは何かがまったくわからなくなるに至るといった論考をするひとに出会ったこと、みなさんこれまでにありませんか。たとえば、精神科医のなだいなださんって、そういう論考をしてませんでしたっけね?

くるいきちがい考 (ちくま文庫)

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*前回の短編(短編NO.2)はこちら。


*このシリーズ(全64短編を予定)の記事一覧はこちら。