(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

医学に差別されるのは誰か(2/3)

*短編集『統合失調症と精神医学の差別』の短編NO.3


 医学は、勝手な基準を設けて、ひとをつぎのように3つに分けます。

  1. 標準的なひとたち(ひと並みのひとたち)
  2. 標準より優れているひとたち
  3. 標準より劣っているひとたち


 1は、世間でよく使われる言葉で言えば、「ふつうのひとたち」、ですよね。いっぽう2と3のひとたちは、「ふつうじゃないひとたち」、ですね。イチロー(元)選手や大谷翔平選手などのことを、世間のひとたちは、大きく見開いた目をキラキラ輝かせながら、「ふつうじゃない」と黄色い声をあげて言ったりしません? かたや3のひとたちのことも世間は「ふつうじゃない」と言いますけど、そのときはしばしば眉間にしわを寄せていたりしませんか。


 イチロー(元)選手らは、良い意味でふつうじゃない」と言われ、3のひとたちは悪い意味でふつうじゃない」と言われるといったところではないでしょうか。


 でも、ひとをこの3グループに振り分けるときの基準って、しばしば変わますよね? で、グループ1(標準的なひとたち)のなかにそれまで入っていたひとが一転、グループ3(標準より劣っているひとたち)のなかに入るようになったり、またその逆のことが起こったりといったことが度々ありますよね?


 その3グループへの振り分け方は絶対的なものではないということですよ。


 さて、そんなふうに勝手な基準を設けてひとを3グループに分ける医学には、偏見があります。どんな偏見か。


ひとは、作り手によって、みな同じになるよう定められている」といった偏見です。


 医学はそうした偏見をもって、それら3グループを眺めます。すると医学にはこう思われてきます。


 ひとはみなおなじになるはずである。なのに、グループが3つに分かれている。おかしい。さてはその3つのなかに、「作り手の定めたとおりになっていない」グループが混じっているな。「作り手の定めたとおりになっていない」だなんて問題だな、って。


 その「作り手の定めたとおりになっていない」グループというのはいったい何でしょうね?


 ここで、正常とか異常とかいう言葉の意味をいま一度、思い出してみてくれますか。

 

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短編NO.1でその意味を確認しましたよ。その場面を一応、下に挙げておきますね。

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 ひとを正常と判定するというのは、

  • ①そのひとを、「作り手の定めたとおりになっている」と見、
  • ②その「作り手の定めたとおりになっている」ことを問題無しとすること、


 でしたね。


 いっぽうひとを異常と判定するというのは、

  • ①そのひとを、「作り手の定めたとおりになっていない」と見、
  • ②その「作り手の定めたとおりになっていない」ことを問題視すること、


 でしたよね。


 ついいまさっき、こう言いましたよ。「ひとは、作り手によって、みなおなじになるよう定められている」とする偏見をもっている医学には、先の3グループのなかに、「作り手の定めたとおりになっていない」グループが混じっていて、その「作り手の定めたとおりになっていない」ことが問題であると思われる、って。その「作り手の定めたとおりになっていない」グループというのは、ちょうどいま再確認したところから言いますと、異常と判定されるグループということになりますね?


 ではその3グループのうちのどれが医学には異常と見えてくるのか


 1「標準的なひとたち」でしょうか。でも、医学にはそのひとたちは、「作り手の定めたとおりになってい」て「問題無し」、すなわち正常と見えるのではないでしょうか。


 なら、2「標準より優れているひとたち」はどうでしょうか。いや、医学にはそのひとたちのことは、「作り手の(特別に)定めたとおりになってい」て「問題無し」、すなわち正常(厳密には天才とかgifted)と見えるのではないでしょうか。


 だとすると、医学に異常であると見えるのは標準より劣っているひとたち」であるということになりますね? うん、まさにそうですね。医学にはそのひとたちこそが、「作り手の定めたとおりになっていない」ものと見え、そのことが「問題」と思われるわけですよね。


 今回は、医学に差別されてきたのは、そしてされていくのは誰か、確認しました。





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*今回の確認をもっと簡単にやる回はこちら。


*前回の短編(短編NO.2)はこちら。


*このシリーズ(全46短編を予定)の記事一覧はこちら。