(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

医学のように統合失調症の原因を特定しようとすると起こることを確認する《4/5》

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第9回

3/5からのつづき

統合失調症を遺伝子一点のせいにする

 医学はこのように統合失調症を脳のなかの一点のせいにしたあと、脳のなかにそうした一点があるのを遺伝子のなかの変異一点もしくはウィルス一点のせいにしますって先に言いましたよ、ね? 医学はそうして、その遺伝子変異一点もしくはウィルス一点を、統合失調症を起こす根本原因であるってことにするわけですけど、出来事を一点のせいにすることは、何度も言いますように、できないじゃないですか。結果、つぎのようなことが起こるんじゃないですか、ね?

  • (a)誰かがいくつかの都合の良いデータしか見ないで、統合失調症を或る遺伝子変異一点のせいにする(統合失調症の原因遺伝子を見つけたことにする)*1
  • (b)ところが後日、追試でその説の真偽を確かめようとした他のひとたちがその説には都合の悪いデータに出くわし、その遺伝子変異とやらを「統合失調症の原因遺伝子」とするには無理があると異議を申し立てることになる。

 たとえばアイスランドで、統合失調症の多発する家系の遺伝子を解析した結果、ニューレグリン‐1遺伝子の変異がみつかった。ニューレグリン‐1遺伝子は、シナプスやグリアの発達に不可欠なタンパク質をコードしている。この遺伝子変異をもつものは、統合失調症の患者全体の一五パーセントであるが、この遺伝子変異によって、統合失調症にかかる危険度はわずかに二〜四パーセント増加するにすぎない。当初は統合失調症の遺伝子マーカーとして有望視されたが追試が進むにつれて関連を認めないという結果が相次いでいる。これは、多因子遺伝という特性から、むしろ普通の成り行きなのである(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、161頁、ゴシック化は引用者による)。

統合失調症 (PHP新書)

統合失調症 (PHP新書)

 

 

  • (c)このように医学は、出来事を一点のせいにすることはできないんじゃないかと疑ってみることもなく、その遺伝子変異を「統合失調症の原因遺伝子」の一片であることにしておき、再度、「統合失調症の原因遺伝子」の特定にとりかかる。
  • (d)その後、先の(a)から(c)の流れを何度もくり返すことになり、「統合失調症の原因遺伝子の一片とされる遺伝子変異とやらがやたらめったら増えていく  


 こういった展開は、アメリカで1970年代にはじまった大規模ガン研究でも起こったことじゃなかったですかね? 身体にガンができるという出来事を遺伝子のなかの変異一点のせいにできると考え、そうした一点を特定する研究(ガンの原因遺伝子を特定する研究)をはじめた。すると、いま言ったのとおんなじことが起こったんじゃなかったですかね?

裏切り者の細胞がんの正体 (サイエンス・マスターズ)

裏切り者の細胞がんの正体 (サイエンス・マスターズ)

 


 いくつかの都合の良いデータしか見ないで、誰かがそうした一点(ガンの原因遺伝子)を見つけたと手を挙げた*2。ところが後日、追試でその説の真偽を確かめようとした他のひとたちがその説にとって都合の悪いデータに出くわし、その遺伝子変異とやらをガンの原因遺伝子とするのは適切ではないと異議申し立てすることになった。そこで医学は、出来事を一点のせいにすることはできないのではないかと疑ってみることもなく、その遺伝子変異とやらをガンの原因遺伝子の一片であることにしておき、再び、ガンの原因遺伝子特定にとりかかることにした。するとその後、こうしたことのくり返しが何度も起こり、ガンの原因遺伝子の一片とされるものがやたらめったら増えていった  


今回は記事を《1/5》《2/5》《3/5》《4/5》《5/5》の5つに分けてお送りしています。

  • ひとつまえの記事(3/5)はこちら。


前回(第8回)の記事はこちら。


このシリーズ(全12回)の記事一覧はこちら。

 

*1:2019年6月24日に、この一文を1箇所訂正しました。

*2:同上。