(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

医学のように統合失調症の原因を特定しようとすると起こることを確認する《2/5》

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第9回

1/5からのつづき

統合失調症を神経系内の一点のせいにする説

 医学は、統合失調症を脳のなかの一点のせいにできると考えます。その一点こそ、「状況に関係なくひとに統合失調症を発症させるもの」(統合失調症を発症させる原因)であって、その一点があれば当然そのひとのもとに統合失調症が発症してくる、と決めつけます。そして、ある医学者たちは、そうした一点は脳の神経系のなかにあって、神経が働くのを邪魔するんだと主張します。で、脳のなかにそうした一点があるのを、さらにあるひとたちは遺伝子のなかの異変一点のせいにし、また別のひとたちはウィルスという一点のせいにします。


 でも、出来事を一点のせいにすることなんかできないじゃないですか。神経系のなかに、そんな一点を探しても見つけられないんじゃないですか、ね? もし見つけることができたとしてもそれはいくつかの都合の良いデータしか見ないで、なんじゃないのかなあ*1

 胎児期のインフルエンザ感染や、脳の構造的な異変が発達早期からはじまったものと考えられることなどから、統合失調症は、胎児期から出生後間もない時期において、神経系が何らかのダメージを受けたり、遺伝子の異常から、発達の過程に問題が生じて、本来の発達をうまく遂げられなかったことに原因があるのではないのかという仮説が登場した。遺伝子変異などの遺伝的要因も、ウィルス感染や出産時の外傷といった環境的要因も、どちらも神経発達に関与し、神経発達の障害を引き起こしうる


 発達が統合失調症の発症に関係しているのであれば、子ども時代に、すでに何らかの徴候が認められるはずである。それを裏づけるべくアメリカやヨーロッパで、子ども時代から、統合失調症が発症する年代までを追跡した調査が行われた。そのうち、もっとも大規模なものがアメリカで行われた。一九五九年から一九六六年に生まれた子ども五万五〇〇〇人を対象にしたコホート研究で、その結果、後に統合失調症を発症した人のうち約三割の人に、子ども時代から特徴的な傾向が認められたが、残りの七割には特段変わった点は認められなかった。


 約三割の人に認められた特徴は、次のようなものである。(略)


 これらは、今日、発達障害として捉えられているものの特徴とも重なる。実際、筆者の経験でも、統合失調症として診断されている人の四分の一〜三分の一には、発達障害やその傾向が認められる。(略)


 しかし、同時に統合失調症の多くでは、発達の問題が見られなかったことも、強調しておく必要がある。それまで、まったく問題なく成長を遂げていた若者が罹患するのである(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、168〜170頁、ゴシック化は引用者による)。

統合失調症 (PHP新書)

統合失調症 (PHP新書)

 


 これはこういうことなんじゃないですかね? すなわち、データのうちの7割都合の悪いデータを見て見ぬふりをしなければ統合失調症を神経系のなかの一点のせいにすることはできない  


今回は記事を《1/5》《2/5》《3/5》《4/5》《5/5》の5つに分けてお送りしています。

  • ひとつまえの記事(1/5)はこちら。


前回(第8回)の記事はこちら。


このシリーズ(全12回)の記事一覧はこちら。

 

*1:2019年6月24日に、この一文を1箇所訂正しました。