(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

原因を特定しようとして医学がハマるいつもの繰り返しについて確認する〈2/3〉

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第8回

1/3からのつづき

◇原因は特定できるか

 9番ボールがコーナーポケットに落ちるのを或る一点のせいにするってのは、その一点を「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」(9番ボールをコーナーポケットに落とす原因)ってことにし、その一点があれば当然9番ボールがコーナーポケットに落ちるってことにすることだって、いま確認したじゃないですか。でも、そんな一点を特定しようとして、実際に9番ボールがコーナーポケットに落ちた或るひとつのケースを穴が空くほど見つめていても、どの点をそうしたものと認定すればいいのか、皆目わかってきません、ね? そこで、9番ボールがコーナーポケットに落ちた他のケースも調べてみようということになります、ね?


 だけど、同様のケースのものを複数集めてきたら、なぜ急にその一点が特定できるようになるんですかね?


 こう考えてるってことなんじゃないですか、ね?


 それら複数のケースには共通の一点があるはずである。それがどのケースでも、9番ボールをコーナーポケットに落としたんだ。その共通の一点こそいま探し求めている状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすものなんだ、って。


 でも、「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」にはいろんな種類のものがあって、それら複数のケースで働いたのは互いに異なるものだったって可能性も、最悪考えられるじゃないですか。9番ボールがコーナーポケットに落ちたケース1では、「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすものA」が働いたが、9番ボールがコーナーポケットに落ちたケース2では、「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすものN」が働いたっていうふうに。で、もしそうなら、9番ボールがコーナーポケットに落ちたケースを複数集めてきても、それぞれのケースごとに別個に、働いた「一点」が何であったか、特定しなくちゃなんなくなって、振り出しに戻りますよね? 結局、「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」は特定不可能だってことになりますよ、ね?


「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」がこのように各ケースで異なっていれば、いま見たように都合が悪いじゃないですか。そこで、出来事を一点のせいにするひとは、何の根拠もなしに決めつけちゃいます。「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」は、9番ボールがコーナーポケットに落ちたどのケースでもみんなおんなじなんだ、って。


(因果関係というとひとが挙げたがる下記哲学者の著書でも、そうした無根拠な決めつけがいきなり為されていませんか、ね?)

人性論〈1〉―第1篇 知性に就いて〈上〉 (岩波文庫)

人性論〈1〉―第1篇 知性に就いて〈上〉 (岩波文庫)

 


 でも都合良くそう決めつけてそれら複数のケースに共通している一点を探してみてもそんな共通の一点なんか見つからないと思いません? 9番ボールがコーナーポケットに落ちるケースを複数、ようく想像してみてくださいよ。果して「共通の一点」なんかありますかね?


 まあ都合の悪いケースを無視したり誤魔化したりすれば共通の一点を見つけたことにできるでしょうけど皮肉で言っていますよ)。


 そもそも探しているのは「状況に関係なく9番ボールをコーナーポケットに落とすもの」ですよ? それがあれば、当然、9番ボールがコーナーポケットに落ちるそんな一点ですよ? そんな一点、この世にあると思います?


 それにだいだい、出来事を一点のせいにすることなんかできないってことだったじゃないですか。なら、どうなります? 出来事を一点のせいにするっていうのは、その一点を「状況に関係なく当の出来事を起こすもの」(当の出来事を起こす原因)とすることですよ、ね? 出来事を一点のせいにすることができないなら、「状況に関係なく当の出来事を起こすもの」(当の出来事を起こす原因もこの世に存在しないってことになるに決まっているんじゃないですか、ね?


今回は記事を〈1/3〉〈2/3〉〈3/3〉の3つに分けてお送りしています。

  • ひとつまえの記事(1/3)はこちら。


前回(第7回)の記事はこちら。


このシリーズ(全12回)の記事一覧はこちら。