(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

「統合失調症」を理解する2(後半)

*身体をキカイ扱いする者の正体は第16回

 統合失調症を発症したある青年は、入院させられてからも、自分が病院にいるということを受け入れようとせず、「芝居はもう止めてください」「これは、ドッキリカメラか何かでしょう?」と言い、これが現実だとは、なかなか認めようとしなかった。彼は入院する十日ほど前から、自分を見る周囲の目が変わったと感じ、それを自分の才能に世間が注目していると解釈した。「どこに行っても、見られているんですよ。たぶんテレビ局のスカウトだと思います」(岡田尊司統合失調症PHP新書、2016年、91ページ、2010年)

統合失調症 (PHP新書)

統合失調症 (PHP新書)

 


 練習問題をふたつこなして肩が十分にあったまったみなさんはもう「青年の身になって」つぎのようにお考えになっているのではないでしょうか。


青年には、精神病と診断され、精神病院に入院するといったことはよもや自分には起こり得ないという強い自信があったのではないか。その自信は、実際に医師に統合失調症と診断されても、また現に精神病院に入院していても、ゆらぐことはなかった。そしてその自信にもとづいて青年はこんなふうに現実を解釈した。『おかしい、僕が統合失調症と診断されたり、精神病院に入院しなければならなくなったりするはずはないのに、どうしてこんなことになっているのか。あ、そうか、わかったぞ。僕は統合失調症のひとの役を演じさせられているのだ。医師や看護師さんたちはお芝居をしているのでしょう? え、ちがう? じゃあ、テレビだ。昔、一般人にいたずらをしかけて楽しむというドッキリカメラなる人気テレビ番組があった。あれでしょう? あの番組が僕を担いでいるのでしょう?』」


 ここまでみなさんが「青年の身になってお考え」になったところを箇条書きでまとめますと、先の練習問題のときと同じく、こうなります。

  • ① 統合失調症と診断され、精神病院に入院することになるという現実に青年は直面する。
  • ② 青年には、自分が統合失調症と診断され、精神病院に入院しなければならなくなるといったことは起こり得ないというゆるぎない自信がある
  • ③ 青年はその自信にもとづいて現実を解釈する。「あ、そうか、統合失調症役をさせられているのだ、いや、テレビに担がれているのだ」。


 ここまで、引用文の前半を見てきました。その後半部分についても引きつづきみなさんは「青年の身になって」いろいろとお考えになります。


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