(新)Nothing happens to me.

科学の欠点、限界、見落としている大事なもの

正常異常という区分けを身体に用いることは可能か

*身体をキカイ扱いする者の正体は第3回

 掃除機を例に、機械を正常異常に区分けするとはどうすることか確認しました。それは、当の機械が、設計製造者の設計製造行為によって定められたありようを呈していれば、問題無しと見て、正常と呼び、かたや設計製造者によって定められたありようを呈していなければ、定められたありようを呈し損なった、問題の有るものと見て、異常(故障)と呼ぶということでした。


 設計製造者の設計製造行為によって定められたありようを基準に、問題無しか有りかを判定するこうした区分けを、身体を機械と考える科学は、ほんとうは機械ではない身体の物的部分にも用います。そして、「身体の物的部分」が、その設計製造者の設計製造行為によって定められたありようを呈していれば、問題無しと見て、正常と呼び、かたや、設計製造者によって定められたありようを呈していなければ、定められたありようを呈し損なった問題の有るものと見て、異常と呼びます。


 けれども、掃除機の設計製造者というのはわかりますが、はたして、「身体の物的部分の設計製造者とはいったいどういった存在なのでしょうか。


 神でしょうか。いや、科学なら世界と考えるべきでしょう(もはや現代科学は「身体の物的部分」の設計製造者を世界と見るだけのひろい視野を失っていて、遺伝子と考えると言ったほうが適切かとは思いますが、これについてはつぎのchapterでとりあげる予定です)。科学がみなさんや俺の「身体の物的部分」を正常異常に区分けするというのは、その設計製造者である世界によって定められたありようを呈していれば問題無しと見て、正常と呼び、世界によって定められたありようを呈していなければ、定められたありようを呈し損なった、問題有りのものと見て、異常と呼ぶということではないでしょうか。


 しかしみなさん、考えてもみてください。


 そもそもみなさんや俺の「身体の物的部分」が、世界によって定められたありよう以外のありようを呈することなど考えられるでしょうか。みなさんや俺の「身体の物的部分」が、世界によって定められたありよう以外のありようを呈するとすれば、それは、法則外のありようを呈するということです。いったいこの世に法則外のありようを呈することのできる存在がひとつでもあるでしょうか。法則外のありようを呈することは奇蹟と呼ばれ、神学的にその有無がはげしく議論されてきたのではなかったでしょうか。


 俺は力こぶを入れて断言します。


 現実が法則外のありようを呈するのを科学が認めるはずは決してない、と。現実が法則外のありようを呈するのを実際に目撃したと誰かが強硬に主張しても、科学は即座にぴしりとこう反論するに決まっています。それは現実が法則外のありようを呈したということではなく、いままで法則と信じてきたものが、じつは現実を網羅できていなかったと明らかになっただけなのだ、と。


 法則が法則の名に値するかぎり、科学は存在に、法則外のありよう、すなわち世界によって定められたありよう以外のありようを呈することを絶対に認めはしません。


 掃除機のような機械についてはたしかに、正常異常という区分けを用いることは可能です。機械の設計製造者とは所詮ひとであって、その設計製造行為は不完全です。先に申しましたように、設計製造者がいかにその設計製造行為によって掃除機を、「コンセントにコードをつないでスイッチを押せばゴミを吸引するもの」たるよう定めたつもりでいても、はなっから定められたとおりにはならないもの(不良品)や、しばらくすると定められたとおりにはならなくなる(故障する)ものが、かならず出てきます。したがって、機械の場合は、設計製造者の設計製造行為によって定められたありようを呈しているか呈していないかで、問題無しか有りか区分けすることにおのずとなります。


 が、世界という設計製造者によってありようを定められる(と科学には考えられるはずの)「身体の物的部分」や、天候や、土くれといった存在は、世界という設計製造者によって定められたありよう以外のありよう(法則外のありよう、いわゆる奇蹟)を呈することは絶対にできません。設計製造者たる世界によって定められたありようを呈しているかいないかで問題無しか有りかを見極めて、正常か異常かに区分けしようとしても、すべてが、世界によって定められたありようを呈していて問題無し、すなわち正常とされるほかありません。異常のほうに割り振られるものはひとつたりとも出てき得ません。


 機械に用いられる正常異常という区分けを、ほんとうは機械ではない「身体の物的部分」に用いることは不可能です*1

つづく


正常異常の区別をひとに対してつけることが差別に当たるということについて、後日、平たい言葉で書き直しました。


前回(第2回)の記事はこちら。


このシリーズ(全22回)の記事一覧はこちら。

 

*1:2017年7月22日付記。機械にも実は異常ということはあり得ない旨、つぎの3つの記事で後日確認しています。