(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

身体を機械とする説明はヒタヒタと破綻に近づいている、のかなあ?

baseballは科学を批判しつづける第11回


 みなさんには大変お世話になっている。マウンドからボールを投げるとき、大谷選手の「身体の物的部分」、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにする景色や聞く音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などが、応答し合いながら共に在るのを、テレビのプロ野球ライブ中継でご覧になる場面を終始、ご想像いただいてきた。


 そうしてご想像いただいてきたように、マウンドからボールを投げるとき(だけには限られないが)、大谷選手の身体の物的部分の一連の動きは、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などの関与のもと起こる。にもかかわらず科学は、大谷選手の「身体の物的部分」でこうした一連の物質的出来事が起こるのに関与するのは大谷選手の身体の物的部分のうちの物質だけだとする(すなわち「身体の物的部分」を機械とする)。それ以外にあげるものがあるとしても、それは、「身体の物的部分」の外からやってきて「身体の物的部分」表面に接するか、もしくはその内部に入ってくるかする物質(科学の言う環境因子)にすぎない。こうして科学は、マウンドからボールを投げるとき大谷選手の「身体の物的部分」で一連の物質的出来事が起こるのに、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などは関与しないとするわけである。


 しかし、大谷選手の「身体の物的部分」で一連の物質的出来事が起こるのに、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などは関与しないとするのは、言ってみれば、全身への血液循環という物質的出来事が起こるのに心臓は関与しないとするようなものである。


 心臓が収縮することで、血液が心臓から全身へ送り出されるところから、心臓はポンプに喩えられる。このように全身への血液循環という物質的出来事は心臓の関与のもと起こるが、一転、全身への血液循環が起こるのに心臓は関与しないということにしようとすれば、全身への血液循環に実際に心臓が寄与する分を、全身への血液循環が起こるのに関与する、ほかの存在が担っていることにでもしなければ説明の帳尻は合わなくなる。たとえば、全身への血液循環に心臓が寄与する分を、動脈が担っていることにでもし、動脈に、実際にはありもしない、全身へ血液を送り出す機能を想定でもしなればならなくなる。


 が、こうした説明のゆく末に待っているのは、動脈を隅々まで研究しても、全身へ血液を送り出す機能など見つからないという未来である。


 マウンドからボールを投げるとき、大谷選手の「身体の物的部分」で一連の物質的出来事は、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などの関与のもと起こる。にもかかわらず、大谷選手の「身体の物的部分」でそうした一連の物質的出来事が起こるのに関与するのは大谷選手の「身体の物的部分」のうちの物質だけだとし、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などは関与しないということにしようとすると、マウンドからボールを投げるとき大谷選手の「身体の物的部分」で一連の物質的出来事が起こるのに、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などが実際に寄与する分を、「身体の物的部分」のうちの何かが担っていることにでもしなければ説明の帳尻は合わなくなる


 先に申し上げたように、科学は、マウンドからボールを投げるとき、大谷選手の「身体の物的部分」に起こる一連の物質的出来事を反射とするなら、それを脊髄という一点のせいにし、随意運動とするなら、それを脳という一点のせいにする。そうして、マウンドからボールを投げるとき大谷選手の「身体の物的部分」で一連の物質的出来事が起こるのに、大谷選手の「身体の感覚部分」、大谷選手が目の当たりにしている景色や聞いている音、大谷選手自身の過去体験記憶や未来体験予想などが寄与する分を、脊髄もくしは脳が担っていることにし実際にはありもしない機能を、脊髄もしくは脳に想定する。つまり、脊髄や脳といった一点を、ひとりの小さな人間に見立てる(擬人化する)。


 けれども、そうした説明の行く末に待っているのは、脊髄もしくは脳をいくら研究してみても、そうした機能は見つからないという未来であるように思われるのである*1

つづく


前回(第10回)の記事はこちら。


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*1:2018年9月4日、内容はそのままで表現のみ一部修正しました。