(新)Nothing happens to me.

科学はボタンをかけ違えたまま来たのではないでしょうか。

見て、郡淘汰説は換骨奪胎したよ

進化論はこの世をたった1色でぬりつぶすんだね第6回

 さて、みなさんはいまの読み替えをどうご覧になっておられたでしょうか。手品でも見ておられる気分でしたでしょうか。


 この進化論者が何をしていたのか、煙に巻かれないよう、いま一度スローモーションで振り返ってみることにいたします。


 生物個体には、利他的行為は淘汰されてすでに無く、今現在利己的行為しかないはずだとする進化論的理論」が、現実を見てみると、生物個体には当てはまらないとまずわかります(じっさいに生物が利他的行為をとっているのを目撃することになります)。そこでこの進化論者は、いま存在するのは利己的行為だけだとするこの「進化論的理論」を、生物個体についていうのは断念します。そして、生物集団(生物種)についていうことにします。つまり、当初の生物個体についての「進化論的理論」を、生物集団には利他的行為は(すでに)無く、利己的行為しか存在しないという、生物集団についての理論へと換骨奪胎します。


 すると、生物個体による利己的行為も利他的行為もともにこの世に存在するのは、ひとえに生物集団による利己的行為に該当するからだということになります。


 これが、生物個体による利己的行為と利他的行為をともに、生物集団による利己的行為に読み替えるなかでこの進化論者がやっていたことです。


 しかし、この進化論者が換骨奪胎して新たにつくりあげた理論、すなわち、生物集団による利他的行為は(すでに)無く、今現在存在しているのは生物集団による利己的行為だけだとする「新・進化論的理論」は適切なものなのでしょうか。


 じっさいに生物集団を調べてみると、他集団に利益を与え、自集団は不利益をこうむるという生物集団による利他的行為も見うけられなければ、自集団が他集団に利益を与え、そのかわりにこの他集団から利益を与えられるといった生物集団による利益の与えあい(後述します)も見あたらないし、とにかく自集団が利益を得、他集団に不利益を与えるという、生物集団による利己的行為しか存在しないとわかった、というのではありません。生物個体については言えなかった、利他的行為は淘汰されてすでになく、今現在利己的行為しか存在しないにちがいないとする「進化論的理論」をこれといった根拠なしにただ、生物集団についてのものへと換骨奪胎しただけのことです。そうしてできあがった、生物集団による利他的行為は(すでに)無く、利己的行為しか存在しないとする「新・進化論的理論」は、何の根拠にももとづいてはおりません。


 で、ドーキンスはといいますと、彼もまた、生物個体による利他的行為を利己的行為へと読み替えはしますが、生物集団による利己的行為へ読み替えるこうした説には極度の嫌悪感を示します。彼は自説を述べるまえにまずこの読み替えを批判します(つぎの引用はざっと読み流してください)。

しかしその前にまず、利他主義についての誤った説明をとりあげねばならない。というのは、そうした説明が一般に知れわたっており、学校で広く教えられているからである。


 この説明は、すでに述べたような誤解にもとづいている。つまり、生きものは「種の利益のために」、「集団の利益のために」ものごとをするように進化する、という誤解である。生物学でこの考え方がどれほど優勢であるかは、容易にみてとることができる。


(略)ダーウィンが生存競争とよんだものにおいて競いあっているのが種であるとすれば、個体は将棋の歩とみなすことができる。種全体の利益のために必要とあれば、犠牲になるのである。もう少し上品な言い方をすれば、各個体がその集団の幸福のために犠牲を払うようにできている種ないし種内個体群のような集団は、各個体が自分自身の利己的利益をまず第一に追求している別のライバル集団よりも、おそらくは絶滅の危険が少ないであろう。したがって、世界は、自己犠牲を払う個体からなる集団によって大かた占められるようになる。これが「群淘汰(グループ・セレクション)」説である。この説は(中略)、進化説の詳細を知らない生物学者たちに長年真実だと考えられてきた説である。(略)おそらく群淘汰説が非常にうけたのは、一つにはそれが、われわれの大部分がもっている倫理的理想や政治的理想と調和しているからであろう。われわれは個人としてしばしば利己的にふるまうが、理想上は他人の幸福を第一にする人々を尊敬し賞賛する*1


 ドーキンスがどのようにこの読み替え(群淘汰説)を批判するか、その詳しいところは『利己的な遺伝子』でご覧になってください。俺たちはついで彼の読み替えを検証しましょう*2

つづく


今回はシリーズの第6回目でした。

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*1:リチャード・ドーキンス利己的な遺伝子〈増補新装版〉』日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳、紀伊國屋書店、2006年、10-13頁

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

 

*2:2018年7月17日に、利己的行為という言葉にかかっていた〈〉と、利他的行為という言葉にかかっていた《》を削除しました。