*ワクチン接種後の痙攣が心因性というのは本当? 第4回
終始申し上げていますように、出来事を一箇所のせいにすることは道理に外れています。子宮頸がんワクチンを接種したあと、複数の子供たちの身の上に起こるようになったけいれん等の出来事を、心一箇所のせいにすることはできません。が、俺がどん引きした件の文章で筆者がいみじくも指摘していたように、このけいれん等の出来事を、子宮頸がんワクチン一箇所のせいにすることもまたできません。とはいえ、子宮頸がんワクチン一箇所のせいにできないというこのことは、子宮頸がんワクチンがこのけいれん等と無関係だということを意味しません。まったく意味しません。最後にそのことを確認して、筆(!!)を措くことにいたします。
アルコールを引き合いに出して考えてみると非常にわかり易くなります。アルコールを飲んでしばらくしたあと、目がまわると訴えだしたひとがいるとします。では、このひとの身の上に起こるようになった、目がまわるという出来事は、アルコールという一箇所(だけ)のせいにできるでしょうか。アルコールを飲んでも、俺みたいにびくとも酔わないひともいます。かたや陽気になるひとも、他人にからみだすひとも、この前は陽気になったのに今日は愚痴っぽくなるひとも、その逆のひとも、すぐ気持ちが悪くなるひともいらっしゃいます。じつに千差万別です。しかしアルコールを飲んだあと、身の上に起こるようになった目がまわるという出来事を、アルコール一箇所のせいにして説明しようとすると、アルコールを飲んだひとみんなに、目がまわるという出来事が起こっていないといけなくなります。目がまわるという出来事を説明するには、アルコールだけではなく、身体のなか全体を配慮にいれる必要があります。そうしなければ、アルコールを飲んだあと、ひとによってそれぞれ呈する状態が異なるという事実は説明できません。
このように、アルコールを摂取したあと、身の上に起こるようになった目がまわるという出来事を、アルコール一箇所のせいにすることは不可能です。しかしそれは、この目がまわるという出来事が、アルコールと無関係だということを意味しません。それと同じように、子宮頸がんワクチンを接種したあと、複数の子供たちの身の上に起こるようになったけいれん等の出来事を、子宮頸がんワクチン一箇所のせいにはできないということは、その出来事と、子宮頸がんワクチンとは無関係だということを意味しません。
にもかかわらず、出来事を一箇所のせいにする見方をとるひとは、こんなことを言いがちです。
「子宮頸がんワクチンを接種した、わたしの患者さんで、けいれん等を起こしたひとなどいなかったよ。子宮頸がんワクチンはそのけいれん等とは無関係だね。そのけいれん等は、心因性だよ」
しかしこれは、アルコールを飲んでも酔えない俺が、アルコールを摂取したあと、目がまわりだしたひとにこう言うようなものです。
「俺も、俺の家族全員もアルコールを飲んで、目がまわったことなどないよ。キミの目がまわっているのと、アルコールとは無関係ということだね。シゴト忙しいんだろ? サラリーマンというのは、もっともストレスにさらされる職種のうちのひとつだからね。目がまわっているのは心因性だよ」
何度も申しますように、子宮頸がんワクチンを接種したあと、複数の子供たちの身の上に起こるようになったけいれん等の出来事を、子宮頸がんワクチン一箇所のせいにできないというのは、そのけいれん等に、子宮頸がんワクチンが無関係だということを意味しません。
以上、子宮頸がんワクチンを接種したあと、複数の子供たちの身の上に起こるようになったけいれん等の出来事を心一箇所のせいにすることはできないということ、さりとて、そのけいれん等の出来事を子宮頸がんワクチン一箇所のせいにもできないが、それはこのけいれん等が子宮頸がんワクチンとは無関係だということを意味しないということを、確認してきました。子供たちの身の上に起こるようになった、けいれん等の出来事を、心という一箇所のせいにし、子宮頸がんワクチンは無関係だとして高をくくっていると、事の深刻さを把握しそこねるかもしれないと思うのは俺だけではないのではないでしょうか。
子宮頸がんワクチンであるサーバリックスとガーダシルの医薬品添付文書が厚生労働省のwebsiteにupされています。検索してご覧になってください。国内や海外での臨床試験での結果も書いてあります。
ではまた別の機会にお会いいたします。
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