(新)Nothing happens to me.

科学はボタンをかけ違えたまま来たのではないでしょうか。

お別れのまえに

原因丸々ひとつは見つからない第11回

 俺たちは今までいろんな出来事について原因を特定してきたことになっている。しかし、みなさんと一緒に確認してきてわかったのは、事故や病気といった出来事の原因と言われているブレーキやウィルスや細菌やタバコといったものが、そうした原因丸々ひとつではないということである。俺たちはどんな出来事の原因を特定する場合にも、原因の一部分を特定し残していたのである。


 で、俺は先ほどみなさんと一緒に、いまだ特定し残されている、原因のその残り部分を突きとめようと、魂を全稼働させながら必死になって頑張った。その結果わかったのは、どうしてみたところで、つねに原因の残り一部分が突きとめられないまま残るということだった。


 では、このように原因丸々ひとつを突きとめられないというのはどういうことなのか。それは、存在しないものを探しているということなんじゃないか。原因なるものは存在しないんじゃないか。事故や病気の原因を特定するとは、その事故や病気を一箇所(原因部分)のせいにすることである。が、そのように一箇所のせいにすることはできないんじゃないか。


 原因なるものは存在しない、すなわち出来事を一箇所のせいにすることはできないというこのことについては場所を変え、あらためて詳しくお話しする予定で俺はいます。健康が許せばですけれども。


 残り時間が少なくなってきました。時は刻々と迫っています。ワタクシごとで恐縮ですが、みなさん、俺は急ぎます。最後にひとつだけ言い残したことに触れて、みなさんへのお別れの言葉に代えたいと思います。


 これからちょっと小難しいことを言います(正確には、当たり前で簡単なことを、愚かな俺の乏しい言語能力ではうまく表現できないということにすぎません)。でも、あと少しだけみなさん、おつきあいください。


 愚かな俺の、稚拙さ*1が尋常じゃないお話しは、津田さんの『医学的根拠とは何か*2』を引き合いに出すところから始まった。津田さんのその本が、疫学(数量化)は病気の原因を特定する方法だ、と言っているのを引用をもちいてまず俺たちは見た。そして、タバコを肺がんの原因とする見解に疑問をなげかけている養老さんの言葉を津田さんがとりあげて、数量化からタバコが、肺がんを生じさせる原因であることは明確になっている、と批判しているのを確認した。


 しかしそのあとみなさんと一緒に、原因丸々ひとつは突きとめられていないこと、また今後も突きとめられはしないことを明らかにした(と愚かな俺は思っている)。


 では、みなさん、原因丸々ひとつを特定できないとこのように指摘することで、俺は疫学的方法(数量化)を否定しようしているのでしょうか。


 ちがいますちがいます、まさか、そんなことはありません。


 疫学(数量化)から俺たちは大事な知を得ることができる。ただそれは、病気の原因丸々ひとつが何かを知ることではないし、そもそも原因丸々ひとつは特定できない。だとすると、いったい俺たちは何を数量化から知ることができるのか。みなさんとお別れするまえに一緒に考えるのはそのことである。

つづく


前回の記事はこちら。

whatisgoing-on.hateblo.jp


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*1:幼稚を稚拙に改めました。2018年8月20日

*2:津田敏秀『医学的根拠とは何か』

医学的根拠とは何か (岩波新書)

医学的根拠とは何か (岩波新書)