*原因丸々ひとつは見つからない第9回
認知症の原因を特定する例も俺なりに先ほど考察した(二つ目の原因特定法のことを言っています*1)。そしてそこでも、認知症の原因の一部分が特定されないままとり残されているのを確認することになった。この残りの一部分をどうやって特定するかに話を移そう。
みなさん、気をとり直して、今度こそは原因の残り部分丸々ひとつを突きとめてやりましょう。
この特定法では、〈一生、認知症にならないグループ〉の誰のうちにもまったく見つからないが、〈認知症のグループ〉のひとたちには共通して見つかるものを、認知症を引きおこす原因とする。が、俺たちの検証によって、〈認知症のグループ〉のひとたちだけに共通して見つかるこのもの(脳内の物質)は、認知症の原因丸々ひとつではなく、その一部分にすぎないということが明らかになった。今、原因のこの一部分(脳内の物質)を原因のB部分と呼ぶことにし、原因の残り部分をA部分と呼ぶことにする。
このA部分を突きとめるのが俺たちの次の仕事である。
そこでまずは〈一生、認知症にならないグループ〉のなかに、原因のB部分(脳内の物質)を持っているひとたちを探し出すことにする (この原因特定法のやり方からすれば、ほんとうはそんなひとはいるはずがないことになるが、実際はかならず出てくる。またこうしたひとが出てこないと、原因の残り部分を探す手がかりは無くなってしまう)。このひとたちには、原因のB部分はあるけれども、「原因のA部分丸々ひとつ」はそろっていない。「A部分丸々ひとつ」がそろっていないために(つまり「A部分のうちの一部」しかないために)、このひとたちのもとでは、認知症の原因丸々ひとつ(A部分+B部分)がそろわない。したがって、認知症を発症しないでいる。
さてこれから考えていくのは次の二種類のひとたちである。
今あげた、〈一生、認知症にならないグループ〉のB部分は持っているひとたち(「A部分のうちの一部+B部分」を持っている)。
もう一つは、〈認知症のグループ〉のひとたち(「A部分+B部分」を持っている)である。
ではこの二種類のひとたちを使って新たに見つけることができるのは何だろうか。「A部分丸々ひとつ」だろうか。
しかし俺はここでもみなさんに残念なお知らせを伝えなければなりません。
ここでも新たに見つけることができるのはせいぜい、前者の「A部分のうちの一部+B部分」を持っているひとたちにはまったく見つからないが、後者の「A部分+B部分」を持っているひとたちには共通して見つかるものだけである。それは、「A部分」から「A部分のうちの一部」を除いたあとに残るものである(より正確にいうなら、「A部分+B部分」−「A部分のうちの一部+B部分」=「A部分−A部分のうちの一部」)。したがってここでもまた、「A部分丸々ひとつ」は見つからないことになる。頭の働きがひとよりも劣っている俺みたいな人間には、結局、「A部分のうちの一部」がまたもや突きとめられないで終わることになるとしか考えつかないわけである。
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*1:原因丸々ひとつは見つからない第5回