(新)Nothing happens to me.

科学はボタンをかけ違えたまま来たのではないでしょうか。

カワグチ・サチジの全青春

原因丸々ひとつは見つからない第1回

 疫学者・津田敏秀さんの『医学的根拠とは何か』を読んでいると、俺、カワグチのもとに、あるひとつの疑問がまざまざとよみがえってくる。20歳代の10年間ずっと不思議に思いつづけていた疑問である。とうとう青年期をドブに捨ててしまうことになったくらい、当時俺はその疑問に気をとられ、何をするにもウワの空なのだった。

医学的根拠とは何か (岩波新書)

医学的根拠とは何か (岩波新書)

 


 みなさんはどうですか、次のような疑問をお感じになったことはありませんか?


 事故が起こるとひとはその原因の特定がまたれると言う。また、ノロウィルスが食中毒の原因だとか、エイズの原因はHIVウィルスであるとか、ペスト菌という原因がかつてパンデミックを引きおこしたとかと言う。そうして事故や病気を、ブレーキやウィルスや細菌といった一箇所のせいにする。

黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)

黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)

 


 しかしひとがそのように原因とするものは、本当に原因丸々ひとつなんだろうか。それが実は原因の一部分だけでしかないということはないんだろうか。


 おかしな疑問でしょうか。いえ、みなさん、俺はおかしな疑問だとは思いません。こんな疑問を誰かが言ったり書いたりするのにこれまでお目にかかったことはないが、この疑問は奇をてらったものではないし、この疑問を他のひとが折に触れて感じていたとしても何も不思議なことはない。むしろこの疑問は未来の大発見につながっているんじゃないかと思わないでもないくらいである。


 いや、みなさん、俺は正気ですし本気です。


 ひとが原因を特定したというとき、本当に原因丸々ひとつが見つかっているのかというこの疑問について俺にこれから一言言わせてください。生という一回こっきりの時間旅行に俺たちがこうして居あわせているのも何かの縁です。


 少しのあいだ、俺におつきあいください。

つづく


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