*短編集「統合失調症と精神医学と差別」から短編NO.29
◆(精神)医学も「現実を自分に都合良く解釈する」
でも(精神)医学は、そうした現実と背反する自信をずっともってきました。(精神)医学の人間理解力は完全無欠であるはずだという自信を、ね? で、その自信に合うよう、現実をこう解してきました。
小林さんの言動が(精神)医学に理解できないのは、小林さんの言動が「理解不可能」なものだからだ、って。
いまこう言いましたよ。
「理解可能」である小林さんのことを理解するだけの力が、(精神)医学にはない(現実)。だけど、その(精神)医学自身には、(精神)医学の人間理解力は完全無欠であるはずだという「自信」がある。このように「現実」と「自信」とが背反するに至ったとき、ひとにとることのできる手は、つぎのふたつのうちのいずれかであるように、やはり俺には思われます。
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A.その背反を解消するために、「自信」のほうを、「現実」に合うよう訂正する。
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B.その背反を解消するために、「現実」のほうを、「自信」に合うよう修正する。
で、(精神)医学はその都度、後者Bの「現実のほうを修正する」手をとってきた。(精神)医学の人間理解力は完全無欠であるはずだとするその自信に合うよう、現実をこう解してきた。
小林さんの言動が(精神)医学に理解できないのは、小林さんの言動が「理解不可能」なものだからだ、って。
そうして現実を自分に都合良く解釈してきた。
いまいったことを箇条書きにしてまとめると、こうなります。
- ①「理解可能」である小林さんのことを理解するだけの力が(精神)医学にはない(現実)。
- ②その(精神)医学自身には、(精神)医学の人間理解力は完全無欠であるはずだという自信がある(現実と背反している自信)。
- ③その自信に合うよう、(精神)医学は現実をこう解釈する。「小林さんの言動が(精神)医学に理解できないのは、小林さんの言動が理解不可能なものだからだ。人間の知恵をもってしては永久に解くことのできぬ謎だからだ。了解不可能だからだ」(現実を自分に都合良く解釈する)
小林さんがしきりに「現実を自分に都合良く解釈する」のを全9回にわたり、じっくり見てきましたけど、「現実を自分に都合良く解釈する」のは何も小林さんだけではないということが、いま最後に、実例をもって確認できましたね。(精神)医学も、そうした解釈を、何百万、何千万ものひとたちにたいし、ずっとしてきたわけですね。明日も、明後日も、変わらず、世界各地の診療室で、そうした解釈を何十回としていくわけですね
以上、このたびは、(精神)医学に統合失調症と診断され、「理解不可能」と決めつけられてきた小林さんに登場してもらい、その小林さんがほんとうは「理解可能」であることを、全9回(vol.1〜vol.9)にわたって実地に確認しました。
- vol.1(下準備:メッセージを受けとる)
- vol.2(朝刊からメッセージを受けとる)
- vol.3(駅名標示から意味、暗号を受けとる)
- vol.4(早稲田大学で学生3人組と会話する)
- vol.5(謎がついに解ける)
- vol.6(政府の手先から逃げる)
- vol.7(帰宅する)
- vol.8(テレパシーで交信する)
次回は2週間後、10月19日(月)21:00頃にお目にかかる予定です。
2021年11月8,9日に文章を一部修正しました。
*今回の最初の記事(1/6)はこちら。
*前回の短編(短編NO.28)はこちら。
*このシリーズ(全43短編を予定)の記事一覧はこちら。