*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第11回
◇一点をとり除いた結果、身体に都合の悪い出来事が起こってきた例
胃にがんができるのを医学は最近、ピロリ菌一点のせいにするようになったじゃないですか。ピロリ菌を、胃がんの原因とか胃がんを発症させる原因とか言うようになりました、ね? で、ピロリ菌をとり除きさえすればいいんだ、とり除きさえすれば胃がんにならなくなるんだと言って、ピロリ菌除去をし出したじゃないですか。たしかに、ピロリ菌を除去すれば、胃がんにならなくなるのかもしれませんよ。そんな都合の良いことが起こるのかもしれませんよ*1。けど、ピロリ菌を除去した結果、身体に起こるのは、そんな都合の良いことだけなのかなって、誰しも不安になるじゃないですか。ピロリ菌を除去した結果、都合の悪い出来事が身体に起こってきても何ら不思議はないんじゃないのかな、って?
で、実際、ピロリ菌除去をいろんなひとにしていってみると、都合の悪い出来事が身体に起こってくるひともいるって、明らかになってきたんじゃないですか、ね? ピロリ菌除去を提唱した医師がいま、ピロリ菌除去に警鐘を鳴らしているってたしか読みましたよ。みずから率先してピロリ菌除去をやったところ、逆流性胃腸炎か何かになったんだ、って。
(いま言ったピロリ菌除去提唱者の話は、たしかうえからふたつ目の記事に載っていたと思います)
胃がんをピロリ菌のせいにし、その一点をとり除きさえすればいいんだ、それさえとり除けば胃がんにならなくなるんだとするこのピロリ菌除去とおなじように、子宮頸がんをHPVのせいにし、その一点をとり除きさえすればいいんだ、それさえとり除けば子宮頸がんにならなくなるんだとして、HPVを身体のうちから除去した結果、ひとによっては、都合の悪い出来事が身体に起こってきても、何ら不思議はないじゃないですか。いや、ひょっとするとそんな、都合の悪い出来事が起こるひとは出てこないのかもしれませんよ。でも、確実なことは実際にHPVをとり除いてみないことにはわかりません、ね? 都合の悪い出来事は身体に起こってこないんだって事前に決めつけることはできませんよ、ね?
(肝炎ウイルスを除去したあと肝臓がんになった方のお話もどうぞ)
医学は、身体に起こる出来事を一点のせいにする出来事観にもとづいて、子宮頸がんになるのをHPV一点のせいにし、身体のなかからHPVが退治されれば、当然、子宮頸がんにならなくなる(段階③)んだとするってことでしたよね。で、HPVをとり除きさえすればいいんだとするってことでしたね。そうすることによって、HPVをとり除いた結果、都合の悪い出来事が身体に起こってくるっていう可能性を、いま見ましたように、無視するということでしたね。自分たちの生活が苦しいのを、国内の移民一点のせいにし、移民を国から排除しさえすればいいんだとする排外主義者が、移民がいなくなったあとの国の状態を考えもしないみたいに、ね?
いやあ、それにしても、こんなふうに、身体に起こる出来事を一点のせいにし、その一点をとり除きさえすればいいんだとすることによって、都合の悪い出来事が結果として身体に起こってくる可能性を無視するっていうのは、医学にはよく見られることなんじゃないのかな。
今回の最初の記事(1/8)はこちら。
前回(第10回)の記事はこちら。
このシリーズ(全12回)の記事一覧はこちら。