(新)Nothing happens to me.

科学には人間を理解することが絶対にできない理由がある

医学のものの見方が雑すぎることを、HPVワクチンを例に確認する〈3/8〉

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第11回


◇医学のHPVワクチン観(概略)

 医学の出来事観と物質観とにもとづいて医学はこう考えるんじゃないですか、ね?


 HPVワクチンを接種すると、当然、HPVにたいする抗体が身体のなかに産出される(以後、段階①とよぶことにしますね)。そのように、HPVにたいする抗体が身体のなかに産出されれば、当然、HPVは身体のなかから退治される(段階②とよびますね)。で、そうして、HPVが身体のなかから退治されれば、当然、子宮頸がんにならなくなる(段階③とよんでいきますね)って。

箇条書きにすると

  • 段階①:HPVワクチンを接種すると、当然、HPVにたいする抗体が身体のなかに産出される。
  • 段階②:HPVにたいする抗体が身体のなかに産出されれば、当然、HPVは身体のなかから退治される。
  • 段階③:HPVが身体のなかから退治されれば、当然、子宮頸がんにならなくなる。


 段階①②③から成るこうした、HPVワクチンについての医学の見方を以後、医学のHPVワクチン観とよぶことにしますね。このHPVワクチン観は、図にするとこうなりません?

●HPVワクチン接種(A)

↓・・・段階①

●HPVにたいする抗体が身体のなかに産出される(B)

↓・・・段階②

●HPVが身体のなかから退治される(C)

↓・・・段階③

●子宮頸がんにならなくなる(D)


 ほら、HPVワクチンを接種すれば子宮頸がんにならなくなる()ってことはすでにもう証明済みなんだと言って、医学は当初からよくグラフをもち出してきたじゃないですか。そのグラフって、「HPVワクチンを接種したひとたち」と「HPVワクチンを接種しなかったひとたち」それぞれの身体のなかに認められる、HPVにたいする抗体の量を比較したものでしたよ、ね? 前者「HPVを接種したひとたち」のほうが、身体のなかに認められるそうした抗体の量が多いってことを表したグラフでした、ね? 医学はそのグラフを差し出してこう言ってきたじゃないですか。


 このグラフから、HPVワクチンを接種すると、当然、HPVにたいする抗体が身体のなかに産出される)ということが示された。よって、HPVワクチンを接種すると、子宮頸がんにならなくなる()のは明らかである、って。


 そんなことが言えるっていうのはまさに、HPVにたいする抗体が身体のなかに産出されれば当然、HPVは身体のなかから退治され()、そうしてHPVが身体のなかから退治されれば、当然、ひとは子宮頸がんにならなくなる()んだって医学が見てる証拠なんじゃないですか、ね?


 で、医学のこのHPVワクチン観、じっくりと見てみてくださいよ。箇条書きでまとめたものより、図のほうを見てもらったほうがわかりやすいかな? (A)から(B)、(B)から(C)、(C)から(D)へとそれぞれ事が進まない可能性(都合の良いことが起こらない可能性)や、(A)(B)(C)それぞれから、都合の悪いほうに事が進んでいく可能性(都合の悪い出来事が身体に起こる可能性)を、ほんとうなら想定していなければならないのに、全然想定していないじゃないですか。


 それって、どういうことですかね?


 
HPVワクチンを接種(A)しても、子宮頸がんにならなくなるっていう都合の良いことが起こってこない可能性や、HPVを接種した結果、都合の悪い出来事が身体に起こってくるっていう可能性を、事のはじめから見落としてるってことなんじゃないですか、ね? つまりHPVワクチンを夢のワクチンにちがいないっていきなり決めつけてるってことなんじゃないですか、ね?


 いま、ウサイン・ボルトさんばりの駆け足で概略をざっと見ましたよ。えっ、説明が大雑把すぎて何ひとつ見えなかった? いや、安心してください。いずれにせよ、いま挙げた段階①②③をひとずつ、後ろから順に、これからゆっくりと見ていくつもりにしてましたよ。


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医学のものの見方が雑すぎることを、HPVワクチンを例に確認する〈2/8〉

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第11回


◆HPVワクチンを接種した結果、身体に起こってくるのは、都合の良いことだけといきなり請け合えるか

 HPVワクチンをおなじように接種しても、アルコールを飲んだときのように、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に起こる出来事がしばしば異なってきても何ら不思議はないじゃないですか(先の「物質の現実」より)。医学が力説するように、HPVワクチンを接種すればたしかに、子宮頸がんにならなくなるっていう都合の良いことが起こってくるのかもしれないけど、ひとによっては、もしくはおなじひとでも時と場合によっては、そうした都合の良いことは起こらないということでも何ら不思議はありません、ね? それどころか、ひとによっては、もしくはおなじひとでも時と場合によっては、都合の悪い出来事が身体に起こってくるということでも何ら不思議はないじゃないですか、ね? だって人間は互いにみな違っているわけだし。


 要するに、HPVワクチンを接種した結果として身体に起こってくるのは、つぎの5つの場合のいずれかになるんじゃないかってまず推測されますよ、ね(下記の「都合の良いこと」というのは、子宮頸がんにならなくなること等です)。

都合の良いことは起こる都合の悪い出来事は起こらない得をする)。

都合の良いことも都合の悪い出来事も起こる

  • (a)都合の良いことの都合の良さが、都合の悪い出来事の都合の悪さを上回る得をする
  • (b)都合の良いことの都合の良さが、都合の悪い出来事の都合の悪さを下回る(損をする)。

3.都合の良いことも、都合の悪い出来事も、起こらない(得も損もしない)。

4.都合の良いことは起こらない。都合の悪い出来事は起こる(損をする)。


 HPVを接種して、得をするひともいれば(1と2(a))、損をするひとも出てくるんじゃないか(2(b)と4)ってことですよ、ね?


 いやHPVワクチンを接種すればほとんどのひとが得をする1か2(a)になるのかもしれませんよでもそれはいろんなひとに接種してみた後でないとわからないことじゃないですか。まだほとんどのひとに接種していない段階で(少なくとも日本では)、みんな得をするんだ(1か2(a)になるんだ)って請け合うのはさすがに無理なんじゃないですかね?


 よく考えてみてくださいよ。摂取接種した結果得しかしない(1か2(a)にしかならない)って物質実際になかなかないじゃないですか。食物ですら最近は、食べて損をする(2(b)か4になる)ひとが増えてきてますし(食物アレルギーってよばれていますね)、だいたいどんな物質でも、摂取・接種すると、いま挙げた5つの場合に、程度の差はあれ、分かれるんじゃないですか、ね? アルコールやコーヒーといった飲食物もそうだし、薬剤なんか尚更そうなんじゃないのかなあ。薬に副作用は付きものだって、最近、多くのお医者さんが涼しい顔して言うじゃないですか、ね?


 得しかしない(1か2(a)にしかならない)なんて薬剤、開発するの、むつかしいんじゃないかなあ。


 夢のワクチン、あればいいですね、あることを望みます、ね? でもそのいっぽうで、そんなのはこれまでの現実から推測するに、なかなか存在しそうにないんだって、誰しも思うじゃないですか。なのにですよ、なのに医学はHPVワクチンをいきなり夢のワクチンだって世間に喧伝しましたよ、ね? で、そうした喧伝を信じてHPVワクチンを接種した結果、損をすることになった(先の2(b)や4になった)と思われるひとたちが少なからず出てきて苦しみを訴えても、そのひとたちのことを、デマを言う人間だと誹謗中傷したり、反ワクチンだと馬鹿にしたりしてまで、まだHPVワクチンを夢のワクチンであることにしようとしているじゃないですか、ね(SNSで医師が熱心にそういうことをしているのに出くわしません?)?


(さっき貼り付けた記事をもう一度貼り付けておきますね)


 なぜ医学はそんなふうにいきなりHPVワクチンを夢のワクチンであると喧伝することができたのか。そして、まだ夢のワクチンであると言い張ろうとするのか。


 金、ですかね?


 いやあ、俺にはその辺のことはまったく何にもわかりませんね。ただ、医学の出来事観と物質観のガサツさからすればおのずとそういうことなるんじゃないかと思うだけで。


 どういうことか。


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医学のものの見方が雑すぎることを、HPVワクチンを例に確認する〈1/8〉

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第11回

目次
・医学の出来事観と物質観(復習)
・夢のワクチンと謳われてHPVワクチンが登場したときにみなさんが覚えた素朴な疑問
・HPVワクチンを接種した結果、身体に起こるのは都合の良いことだけといきなり請け合えるか
・医学のHPVワクチン観(概略)
・医学は子宮頸がんをHPV一点のせいにする(段階③)
・一点をとり除いた結果、身体に都合の悪い出来事が起こってきた例
・HPVにたいする抗体が身体のなかにできると(段階②)
・HPVワクチンを接種すると(段階①)
・医学の出来事観と物質観にもとづくと(結論)


◆医学の出来事観と物質観(復習)

 ここまで医学の出来事観と物質観を見てきました。


 医学は、ひとの身になろうとする代わりに、ひとの身体に起こる出来事を一点のせいにする(医学の出来事観)ってことでしたね。


 で、そうした出来事観を突きつめて物質を定義づけるんだってことでしたね。その物質定義はつぎの3通りの仕方で表現できました。

  • 表現①:物質それぞれは、身体に特定の出来事を起こす原因である(原因という言葉をもちいての定義)
  • 表現②:物質それぞれは「状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすもの」である(原因という言葉をもちいない定義)
  • 表現③:おなじ物質をおなじように摂取接種すれば当然、身体におなじ特定の出来事が起こる。


 でも、物質って実はそんなものではありませんでしたね。そもそもこの世に原因なんてものは存在しないということでした。つまり、おなじ物質をおなじように摂取・接種しても、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に起こる出来事はしばしば異なるっていうのが現実なんだってことでしたね。アルコールや、コーヒー、毒、薬を挙げてそのこと確認したじゃないですか、ね?

  • 物質の現実:おなじ物質をおなじように摂取しても、ひとによって、もくしはおなじひとでも時と場合によって、身体に異なる出来事が起こることシバシバである。


 さて、医学はそうした不適切な出来事観と物質観にもとづいてものを見るわけですけどその結果どういうことになるとみなさん思います? わかりやすい例をもちいて、その辺りを最後にちょっと見ておきません?


 そうだなあ、いまなら、HPVワクチンなんかそのわかりやすい例になるんじゃないかな。


 いっちょ、HPVワクチンで考察してみますか?


◆夢のワクチンと謳われてHPVワクチンが登場したときにみなさんが覚えた素朴な疑問

 HPVワクチンは子宮頸がんワクチンという名前で華々しく登場したじゃないですか。みなさんそのときのこと覚えてます? たしか夢のワクチンって騒がれましたよね? 接種すれば子宮頸がんにならなくなるんだ多くのひとたちの命が救われるんだこれは夢のワクチンなんだって、当初さかんに喧伝されたじゃないですか。いまも相変わらずそう喧伝されているのかもしれないですけど。


(言葉遣いが丁寧な新聞にしては露骨な表現ですよね)


 だけど、最初そうした喧伝を耳にしたとき、みなさん疑問を覚えたんじゃないですかね


 接種すれば子宮頸がんにならなくなるんだ、多くのひとの命が助かるんだとしきりに言うけど、そのワクチンを接種した結果身体に起こるのはそんな、子宮頸がんにならなくなるっていう都合の良いことだけなのかな、って。


 そうならいいし、是非そうであることを望むけど、この甘くない世界に、都合の良いことしか起こらないっていうそんなうまい話あるのかな、って。


 まだ登場して間もないワクチンなのに、接種の結果身体に起こるのはそんな都合の良いことだけなんだってなぜいきなり自信満々に請け合えるのかな、って。


 夢の新薬と謳われて登場したものの、いざ使ってみると、重篤な副作用をこうむるひとが続出したなんてこと、これまで少なからずあったんじゃないのかな、って  


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医学のガサツな物質観について確認する(3/3)

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第10回


 毒と呼ばれる物質はどうですかね? 服毒なんかの場合ですら、摂取後、身体に起こる出来事は、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって異なると言わなくちゃなんないんじゃないですか、ね? 公害被害をうけたひとの身体に起こる出来事はみなおなじ、というのではないじゃないですか。症状は多様って聞きません?(俺の聞き間違いですかね?) 動物の毒はどうです? 蛇の猛毒なんか摂取すれば死ぬに決まっているとだいたい誰でも思うじゃないですか? けど、そんな毒を自分に接種しているひとがいるんだって、最近、ニュースになってましたよ、ね? 毒をおなじように摂取・接種しても、ひとによって、またおなじひとでも時と場合によって、身体に起こる出来事はしばしば異なるって言わなくちゃなんないんじゃないですか、ね?


(蛇の毒についての記事はこれですよ)


 だってそうですね。おなじ薬をおんなじように飲んでも、効くひともいれば効かないひともいる。具合が悪くなるひとだっています、ね? 最悪、死んでしまうひとだって、ね? おなじ薬をいつもとおんなじように飲んでも、ふだんは効くのに、時によって効かなかったり具合が悪くなったりすることだってありますよ、ね?


 でもまあ、アルコールであれ、コーヒーであれ、毒であれ、薬であれ、その他の物質であれ、おなじように摂取・接種しても、こんなふうに、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に起こる出来事がしばしば異なるっていうのは、考えてみりゃあ当たりまえのことじゃないかなあ


 ふたりの人間を考えてみてくださいよ。お互いどんなにそっくりでも、まったく違いが無いなんてことはないじゃないですか。じゃあそんなふうに互いに違いがあると、どうなります? そのふたりが、おなじ物質をおんなじように摂取・接種した結果、身体に起こる出来事が互いに異なってきたとしても何ら不思議はない、ってことになるじゃないですか、ね?


 同様のことが、ひとりの人間についても言えますよね? 昔の俺は、いまの俺にあらず。ひとは刻一刻と変化していくじゃないですか。なら、おなじひとがおなじ物質をおんなじように摂取・接種しても、時と場合によって、身体に起こる出来事が異なってきたって何ら不思議はないじゃないですか、ね?


 医学の物質観を見てきました


 最初にこう確認しましたね? 医学は医学の出来事観(身体に起こる出来事を一点のせいにする見方)を突きつめて、物質それぞれをみな、身体に特定の出来事を起こす原因状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすもの)と決めつけるんだ、って。そうして、おなじ物質をおなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こってくるってことにするんだ、って。でも、実際、物質はそんなものじゃないってことでしたね。おなじ物質をおなじように摂取・接種しても、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に異なる出来事が起きることシバシバなんだ、って。論理的に考えてみてもそうなるのは当たりまえなんだ、ってことでしたね。

【1.医学の物質観まとめ】

  • 表現①:物質それぞれは、身体に特定の出来事を起こす原因である(原因という言葉をもちいての表現)。
  • 表現②:物質それぞれは、「状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすもの」である(原因という言葉をもちいないでの表現)
  • 表現③:おなじ物質をおなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こる

【2.物質の現実】

  • おなじ物質を、おなじように摂取・接種しても、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に異なる出来事が起こることシバシバである。


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第1回


第2回


第3回


第4回


第5回


第6回


第7回


第8回


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医学のガサツな物質観について確認する(2/3)

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第10回


◆医学の物質観(3つの表現で)

 医学は、身体に起こる出来事ひとつひとつを、一点のせいにしていきます、ね? つまり、身体に起こる出来事ひとつひとつにたいし原因を想定しますよ、ね?


 医学はその見方を徹底します。そして、こう考えます。この世の物質はそれぞれみな、身体に特定の出来事を起こす原因状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすもの)なんだ、って。


 すなわち、物質Aは、身体に出来事aを起こす原因状況に関係なく身体に出来事aを起こすもの)であって、物質Aがあれば当然、身体に出来事aが起こってくるし、物質Bは、身体に出来事bを起こす原因状況に関係なく身体に出来事bを起こすもの)であって、物質Bがあれば当然、身体に出来事bが起こってくる、また物質Nは、身体に出来事nを起こす原因状況に関係なく身体に出来事nを起こすもの)であって、物質Nがあれば、当然、身体に出来事nが起こってくるんだ、っていうふうに考えます。


 そうして、おなじ物質を、おなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こってくると決めつけます。


 そのように物質を見るのが、医学の物質観だと言えるんじゃないですかね?

【医学の物質観まとめ】

  • 表現①:物質それぞれは、身体に特定の出来事を起こす原因である(原因という言葉をもちいての表現)。
  • 表現②:物質それぞれは、「状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすもの」である(原因という言葉をもちいないでの表現)。
  • 表現③:おなじ物質を、おなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こる


 ほら、ガンをやッつける薬だとか、血圧を下げる薬、インフルエンザを予防するワクチン、発がん性物質、食べ物Yはがん発症率を何%上げる、コーヒーは心臓血管系の疾患発症率を低下させる*1、ワクチンを接種すれば麻疹にかからなくなる、といったように、医学は物質それぞれを、おなじように摂取接種すれば当然、身体におなじ特定の出来事が起こるもの(上記表現③)であるかのように、世間に宣伝するじゃないですか、ね?


 でも、この世に原因なんかそもそも存在しないんじゃなかったでしたっけ? 出来事を一点のせいにするというのは、その一点を、当の出来事を起こす原因(状況に関係なく当の出来事を起こすもの)とすることである。だが、出来事を一点のせいにすることはできない。したがって、そんな原因なるもの(状況に関係なく当の出来事を起こすもの)も存在しやしないんだって、ビリヤードの例を用いて確認したんじゃなかったでしたっけ、ね?


(そのことを確認したのは、下の記事)


 なら、上記の表現①と②のように、物質それぞれを、身体に特定の出来事を起こす原因状況に関係なく身体に特定の出来事を起こすものと見るのは不適切だってことになるじゃないですか、ね? おなじ物質をおなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こる(表現③)ってことにするのは不適切なんだって、ね?


◆物質の現実(アルコール、コーヒー、毒、薬)

 実際のところ、おなじ物質をおなじように摂取・接種すれば、当然、身体におなじ特定の出来事が起こるのかっていうとそういうふうにはいきませんよ、ね? おなじ物質をおんなじように摂取・接種しても、ひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって身体に起こる出来事はしばしば異なるじゃないですか、ね?


 たとえばアルコールを考えてみてくださいよ。みんなおなじように飲んでいるのに、ひとりだけベロンベロンになってたりすることあるじゃないですか。それとか、いつもとおんなじように飲んでいるのにひどく酔っ払っちゃう淋しい夜とかも、ね? アルコールをおんなじように摂取・接種しても、こんなふうにひとによって、もしくはおなじひとでも時と場合によって、身体に起こる出来事が違ってきたりしますよ、ね? 


 コーヒーもそうじゃないですか? おんなじようにコーヒーを飲んでも、とても美味しがるひともいれば、具合が悪くなっちゃうひとだっているじゃないですか。それとか、いつもとおんなじように飲んでいるだけなのに、時によってひどく胃もたれしちゃったり、口がとても臭くなったりするようなこと、ありますよ、ね?


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*1:ちなみに、コーヒーを、心臓血管系の疾患発症率を低下させる物質であるとする医学の見方について考察した記事はこちら。

医学のガサツな物質観について確認する(1/3)

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第10回

目次
・医学の出来事観の復習
・医学の物質観(3つの表現で)
・物質の現実(アルコール、コーヒー、毒、薬)


◆医学の出来事観の復習(読み飛ばしてもらっても支障ありませんよ)

 医学は、ひとの身になろうとする代わりに、身体に起こる出来事を一点のせいにするってことでしたよね。ここまで、その、出来事を一点のせいにするっていうのがどういうことか見てきました。こういうことでしたね。


出来事を一点のせいにするというのはつぎのような論理である(第6回)。

  • 出来事が好ましい場合には、すべてをその一点のおかげとし、その一点を過大評価すること。
  • 出来事が好ましくない場合には、すべてをその一点におっかぶせ、その一点をとり除きさえすればいいとすること(排外主義の論理)。


しかし身体に起こる出来事を一点のせいにすることはできない物理学も化学も出来事を一点のせいにできるなどと教えてこなかった(第7回)。


身体に起こる出来事を一点のせいにするというのはその一点を状況に関係なく当の出来事を起こすもの」(当の出来事を起こす原因であることにしその一点があれば当然当の出来事が起こってくるということにすること(第8,9回)。

  • しかし、そんな一点(原因)はこの世に存在しない(そんな一点を特定したと言っているひとは、都合の良いデータしか見ていない)。
  • それでもそうした一点(原因)を特定しようとすると、つぎのことが起こる。

(a)いくつかの都合の良いデータしか見ないで、誰かがそうした一点(原因)を特定したことにする。

(b)追試でその説の真偽を確かめようとした他のひとたちが、その説には都合の悪いデータに出くわし、その説に異議を申し立てることになる。

(c)そこで医学は、誰かが挙げたその一点を、探し求めている一点(原因)の一片であることにしておいて、再度、特定作業をやり直す。

(d)以後、上記(a)から(c)のくり返しが何度も起こり、探し求めている一点(原因)の一片とされるものがやたらめったら増えていく(それら一片同士を都合良く結びつけて、当の出来事が起こるメカニズムであることにする)。


 さて、こうして確認してきたのはいったい何ですかね? 言ってみれば、医学の出来事観、じゃないですか、ね?


 さあではここからは医学の物質観のほうを見ていきますよ


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前回(第9回)の記事はこちら。


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医学のように統合失調症の原因を特定しようとすると起こることを確認する《5/5》

*医学は喩えると、空気の読めないガサツなおじさん第9回


統合失調症をウィルス一点のせいにする

 医学は統合失調症を脳のなかの一点のせいにするって先に言ったじゃないですか。で、脳のなかにそうした一点があるのをさらに、遺伝子変異もしくはウィルスという一点のせいにするんだ、って。ついいまさっき、その、遺伝子変異のせいにするほうを見ました、ね? じゃあウィルスのせいにするほうも最後に見ておきますか

統合失調症の人は、一月から四月の、冬から早春に生まれた人に多いことが知られている。逆に、南半球では、七月から九月生まれの人に多い。この事実は、統合失調症の原因と何か関係があるのではないかと考えた人も多く、さまざまな説明がなされてきたが、そのうちもっとも有力なものの一つは、ウィルス感染説である。


 母親の胎内にいるときに、母親がインフルエンザなどに感染することで、神経系の発達が障害されて脆弱性を抱え、発症しやすくなるのではないかというのである。実際妊娠中にA型インフルエンザに感染したとき、発症リスクが高まるとの報告がある。最近の研究でも、妊娠初期に母親がインフルエンザに感染すると、生まれた子どもが統合失調症にかかる危険は七倍になると報告されている(岡田尊司統合失調症PHP新書、2010年、165〜166頁)。

統合失調症 (PHP新書)

統合失調症 (PHP新書)

 


 だけど、統合失調症をインフルエンザウィルス一点のせいにするためには都合の悪いデータを無視しないといけないんじゃないですかね。ほら。

 もっとも、夏生まれの人にも、統合失調症を発症する人はたくさんいる。最近の報告によると、陰性症状を発症の中心とする統合失調症は、夏生まれの人に多いという結果が示されている(同書166頁)。 


 他にこんなことも言われているそうじゃないですか。

 ウィルス感染が関与しているケースは、ほかにも知られている。二〇〇一年、ジョンズ・ホプキンズ大学小児医療センターの研究チームは、一部の統合失調症の原因が、Wレトロウィルスの感染によるとする研究結果を発表した。患者の脳脊髄液を調べると、急性期の患者の三〇パーセントから、感染を示すRNAが認められたが、対照とした他の患者や健常者からは、一例も認められなかったという(前掲におなじ)。


 急性期の患者に限ったうえさらにそのなかの70%を無視するというのでなければ、統合失調症をWレトロウィルスのせいにすることはできない、ってところですかね? でも、さすがにそれじゃあ、このWレトロウィルスを統合失調症の原因ウィルスってことにするには無理があるんじゃないのかなあ。で、もし実際に、無理があるってことになったら、医学はそのときどうするとみなさん思います? 出来事を一点のせいにしようとしているのがそもそも不適切なんじゃないかってみずからを疑ってみると思います? 俺ならこう予測しますね。医学はそのウィルスを統合失調症を発症させる原因の一片だってことにしておいて、再度、統合失調症を発症させる原因の特定作業をし直すんじゃないか、って。


 ほら、さっきの引用のつづきを見てくださいよ。

 ただし、ウィルス感染説は、多様な原因の一つを説明するにすぎない(前掲におなじ)。



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付録

  • 科学者・中村桂子さんは下の著書で、身体に起こる出来事を遺伝子一点のせいにすることはできないと、くり返し、警鐘を鳴らしてません?
ゲノムが語る生命 ―新しい知の創出 (集英社新書)

ゲノムが語る生命 ―新しい知の創出 (集英社新書)

 
  • 身体に起こる出来事を一点のせいにできると考える大科学者・リチャード・ドーキンス氏は、下の本で、「溺れた仲間を助ける遺伝子」なるものさえ想定していますね。
利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

 


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